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ギリシャ神話⑤ オルフェウスの冥府行

先日、宮崎駿の『千と千尋の神隠し』を観た。
漫画『ヒカルの碁』の塔矢アキラに激似の男の子ハクや、クトゥルー神話の無貌の神ニャルラトホテプとしか思えない祟り神カオナシが出てくるあの映画である。

この映画の中で印象に残った場面があった。主人公の千尋が変な世界から現実に帰る時に、「決して後ろを振り返るな」と言われているところだ。

これは民話や神話によくあるパターンで「見るなのタブー」と呼ばれており、箱を開けてはいけない『浦島太郎』や『パンドラの箱』、部屋を覗いてはいけない『鶴の恩返し』や『見るなの座敷』などがその類型に当てはまっている。

それらの話の中でも特に、千と千尋と同じ「後ろを振り返ってはならない」系の話をいくつか紹介したいと思う。


オルフェウスという竪琴の名人がいた。
彼はエウリュディケーというニンフ(妖精)と結婚したのだが、新婚早々彼女は毒蛇に噛まれて死んでしまう。何と不運な^^;

オルフェウスとエウリュディケー
オルフェウスとエウリュディケー


オルフェウスは嘆き悲しみ、妻を取り戻すために冥界へ旅立つ決心をする。

冥界に行くためには、まず三途の川を渡らねばならない。ギリシャ神話におけるあの世とこの世を結ぶ三途の川の渡し守はカロンという名で、金を持ってない死者は舟に乗せてくれないケチくさいジジイである。

カロン
カロン(料金が支払えない死者は、現世とあの世の間をさまようことになってしまうらしい。そのため古代ギリシャでは、葬式の際に遺体の口の中に銅貨を入れて弔う風習があった)

カロンはもちろん死んでいない人間もあの世へは連れて行ってくれない。そこでオルフェウスは得意の竪琴を演奏する。その物悲しい旋律はカロンの心を打ち、オルフェウスは特別に三途の川を渡る舟に乗せてもらうことができた。

そうして順調に亡き妻を求める旅路を行くオルフェウスの前に、次なる壁が立ちはだかる。
ギリシャ神話の冥界の入り口には地獄の番犬ケルベロスというモンスターがいて、死んでない者を中には入れてくれない。

ケルベロス
ケルベロス(三つの頭を持つ犬または獅子の化け物。RPGにもよく出てくる)

のこのこと冥界の入り口にやってきたオルフェウスにこの化け物が襲い掛かるのだが、彼は得意の竪琴をかき鳴らして化け物を大人しくさせた。またかよ。
愛する者を喪った彼の奏でる哀切な音色の前には、さすがのケルベロスも戦意を失ったらしい。どうでもいいけど音楽で人を感動させるのって凄いよね。

それから後も幾多の苦難がオルフェウスの行く手を阻むが、彼は全てその竪琴の腕前で解決していく。ワンパターンなので書くのめんどくさす。

そしてようやく彼は冥界の王ハデスの宮殿にたどり着いた。
彼は冥界の支配者であるハデスに妻を返してくれるよう頼み込むけれども、当然ハデスの答えはノー。
業を煮やしたオルフェウスは竪琴を取り出して、会いたい気持ちを奏でた。そればっかりw
これにはさすがのハデスも同情し、ついに妻エウリュディケーを連れて帰る許可をオルフェウスにしぶしぶ与えたのだった。

しかし無条件でという訳ではない。「冥界を抜け出すまでの間、決して後ろを振り返ってはならない」という条件を約束することで、オルフェウスは愛するエウリュディケーと共に現世に帰れることになった。


オルフェウスは妻の手を握って来た道を引き返して行った。行きは悲壮な旅であったが、帰りは願いが成就したので足取りも軽い。

722px-Jean-Baptiste-Camille_Corot_-_OrphC3A9e.jpg

やがて冥界の出口に差し掛かった時、何を思ったのか上手く行き過ぎて調子にでも乗ったのか、あるいはここまで来れば大丈夫と確信したのか、彼は愛しい妻の顔を見ようと後ろを振り返ってしまう。アホかお前は。
振り返ったが最後、哀れエウリュディケーは再び死者の国に引き戻されてしまった。
オルフェウスは激しく後悔したがもう後の祭り。いくら竪琴をかき鳴らしても、もう冥界へは入れてもらえなかったとさ。


参考資料

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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